「素敵なダイナマイトスキャンダル」 は、白夜書房編集者だった末井昭著作の映画化。白夜書房は知っていたが、その元本のことは知らなかった私は、ダイナマイトで心中なんていう話が実話とは思わないで鑑賞していた。けれど、見ている途中でどうやら実話らしいとわかってきた。
80年代までも含めたいわゆるバブル以前の日本の再現描写にとても感心した。私自身70年代に高校大学時代を過ごした世代だが、若い世代の製作者たちがここまで描くんだなあと驚かされた。60年代70年代を若い世代が描いた映画ではいつも、服装だの街並みだのはともかくとして、もう、なんだかしら、ぴかっと明るく清潔な空気が漂ってしまっているところが「あ~ちゃうんやわぁ」と思わされてしまうが、この映画はしっかりネクラだ。
そう、やっぱり、ネクラだった。あの時代というのは。
今現代も経済的格差が生まれていたりして、暗く沈んだところのある時代なのだろうが、あの頃の暗さはこれとは違う。あれは、経済的な問題ではなく、つまり、ネクラだったのだ。私らはやはりネクラ世代だった。
ネクラとは。
自分が金がないとか将来が生活が不安だとかいうことではなくて、それ以前のこと。つまり親の世代なのだ。親の世代が圧倒的に暗かった。その親世代の暗い軛をいやおうなく背負っていまっていたのだ。逃れようとしていたが、逃れることはできず、実はそこからしか始まらなかったのだが、そのことに若くて気が付けずにいた。それでもがいたり、うろうろしたりしていた。
この作品の主人公もそうだし、私自身もそうだったと、いまくっきりと思う。